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庄野潤三 完全ガイド|代表作・年譜・主題から読み解く静かな文学世界

庄野潤三 完全ガイド|代表作・年譜・主題から読み解く静かな文学世界

本ページは、庄野潤三の全体像を俯瞰できる「総合ガイド」である。

代表作・読み始めの順番・主題(夫婦/家族/聞き書き/随筆)を整理し、気になった作品から各考察へとご案内していきたい。

個別作品の詳しい考察は、各記事で丁寧に扱っているので、ぜひ、ご参照いただきたい。

庄野潤三とは?

要点:戦後文学の中で「日常」を主題にし、夫婦・家族の時間を静かな筆致で描き続けた作家。

庄野潤三は、戦後に登場した「第三の新人」の芥川賞作家である。

初期には夫婦生活を、中期以降は家族の暮らしを題材とする作品を多く発表。

晩年期に手掛けた「夫婦の晩年シリーズ」の人気は高く、「静かなブーム」と呼ばれた。

庄野文学の特徴

長いキャリアを通して作品を書き続けてきた庄野潤三の作品は、発表時期によって、いくつかのカテゴリーに分けることができる。

① 夫婦小説

芥川賞受賞作『プールサイド小景』や新潮社文学賞受賞作『静物』など、初期の作品には夫婦関係の危機を描いたシリアスな作品が多い。

晩年の穏やかな家族小説の地盤となっているのが、この時期の夫婦小説だった。

② 家族小説

生田の「山の上の家」へ引っ越した後は、読売文学賞受賞作『夕べの雲』や野間文芸賞受賞作『絵合せ』など、五人家族の日常を題材とする作品を中心的に発表した。

自身の家族をモデルとする家族小説は、『鉛筆印のトレーナー』『さくらんぼジャム』などの「フーちゃん三部作」のほか、晩年の大シリーズ「夫婦の晩年シリーズ」まで続いた。

③ 聞き書き小説

庄野潤三は、関心の高い一般市民への取材をそのまま小説化する、いわゆる「聞き書き小説」を得意としていた。

なかでも『紺野機業場』は芸術選奨文部大臣賞を受賞している。

④ ガンビアシリーズ

1957年から一年間のアメリカ留学は『ガンビア滞在記』をはじめ、『シェリー酒と楓の葉』『懐しきオハイオ』などの長編小説となった。

また、短編小説にも当時の体験は数多く反映されている。

⑤ エッセイ集

庄野潤三は、イギリス風の文芸エッセイでも人気があった。

文芸誌や新聞などに発表した作品を収録した随筆集(計9冊)のほか、自選エッセイ集『子供の盗賊』がある。

⑥ その他

作家としての充実期には、サヴォイ・オペラの歴史を綴った『サヴォイ・オペラ』や、チャールズ・ラムの足跡を辿ったロンドン紀行『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』、作家仲間との交友を綴った自伝的エッセイ『文学交友録』など、濃密で力強い作品を残している。

庄野潤三の全著作リスト

庄野潤三作品一覧|出版順・年代順で読む全長編と短編集

庄野潤三の年譜

日本の小説家「庄野潤三」の超マニアックな年譜を作ってみました

庄野潤三の代表作

庄野潤三は数多くの作品を遺しているので、初心者は代表作から入るのが順当。

ただし、発表時期によってテーマやスタイルが異なるので、自分の好きなスタイルを見つけて、そのシリーズから読み進めていくのがおすすめだ。

どれから読む?(迷ったらこの順)
・夫婦小説の入口:『プールサイド小景』
・家族小説の入口:『ザボンの花』→『夕べの雲』
・聞き書き小説:『早春』
・夫婦の晩年:『庭のつるばら』

① プールサイド小景

芥川賞を受賞した表題作を含む短篇小説集。

当時の庄野さんは「短篇小説作家」としてのイメージが強く、『愛撫』『静物』などの作品集が代表作として取り上げられることが多かった。

微妙な夫婦関係の不安や緊張感を主題としていたことも、初期庄野文学の特徴。

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② ザボンの花

初めての長編小説。東京石神井公園時代の暮らしをモチーフにした家族小説で、ささやかな日常生活の中に人生を見つめている。

阪田寛夫は「庄野さんの文学の本筋につらなって行く、いちばん初めの湧き水、地面の深いところから出てきたばかりの泉のような作品」と評している。

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③ 夕べの雲

生田の山の上で暮らす五人家族をモチーフとした家族小説で、自分の代表作として庄野さんは、必ずこの『夕べの雲』をあげた。

五人家族の物語は、野間文芸賞を受賞した『絵合せ』や、赤い鳥文学賞や毎日出版文化賞を受賞した『明夫と良二』へと続いてゆく。

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④ 早春

かつての同級生との交流を通して「青春の地・神戸」の歴史と現在を描いた聞き書き小説。

爽やかな読後感が印象的な作品だ。

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⑤ 庭のつるばら

子どもたちが独立して二人きりとなった老夫婦が、どのような暮らしを送っているかを描いた、いわゆる「夫婦の晩年シリーズ」の作品。

最晩年の作品は、若い女性の支持を得て「静かなブーム」と呼ばれ、10年間にわたり全11作品まで続けられた。

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よくある質問(FAQ)

庄野潤三はどんな作家?

戦後文学を代表する作家の一人で、夫婦や家族の日常を静かな筆致で描いた小説家。

派手な事件は起こらないが、生活の細部に宿る感情や時間の積み重ねを丁寧に描くことで、「日常そのものが文学になる」ことを示した。

庄野潤三はどれから読むのがおすすめ?

初期の緊張感ある夫婦小説なら『プールサイド小景』、家族小説の代表作なら『夕べの雲』、晩年の到達点を知るなら『庭のつるばら』がおすすめ。

作風の変化をたどると、庄野文学の奥行きが見えてくる。

庄野潤三の文学の魅力は?

大きな事件や劇的な展開ではなく、家族と過ごす時間や何気ない会話の中に人生の意味を見いだす点にある。

読後には「何も起きていないのに、何かを受け取った」という静かな余韻が残る。

庄野潤三の作品考察

『時空標本』では、庄野潤三の多くの作品について、深読み考察記事を掲載している。

詳細は、カテゴリー「庄野潤三」からご覧いただきたい(「文学考察」の子カテゴリー)。

大人気│夫婦・家族小説

「夫婦の晩年シリーズ」全11作品を見る

「家族小説」名作5選を見る

「フーちゃん三部作」を見る

本格派│長篇小説

【偏愛解説】「ガンビア滞在記」

【偏愛解説】「陽気なクラウン・オフィス・ロウ」

【偏愛解説】「文学交友録」

名作揃い│短篇小説

【偏愛解説】『プールサイド小景・静物』

【偏愛解説】「相客」

【偏愛解説】「秋風と二人の男」

大人の知見│随筆集

【偏愛解説】「自分の羽根」

【偏愛解説】「クロッカスの花」

【偏愛解説】「誕生日のラムケーキ」

随筆集(全10冊)を見る

庄野潤三をもっと深く知る

神奈川近代文学館「没後15年 庄野潤三展」

「中国料理 味良」のタンメンと庄野潤三の自宅(山の上の家)

庄野潤三の小説に登場するレコードを聴く

庄野潤三ファン必見の参考資料

ここでは、庄野文学を理解するために有用な参考資料を掲載している。

① 庄野潤三ノート / 阪田寛夫

『庄野潤三全集』(講談社、1973-1974)の月報に掲載された解説を書籍化したもので、庄野文学の研究に必須の作品となってる。

著者の阪田寛夫は庄野潤三の親友で、次女内藤啓子が父の評伝『枕詞はサッちゃん 照れやな詩人、父・阪田寛夫の人生』を出版している。

▶ 『庄野潤三ノート』を今すぐ読む(文庫Kindle/Audible)

▶ 『枕詞はサッちゃん』を今すぐ読む(文庫Kindle/Audible)

② 山の上の家 庄野潤三の本 / 夏葉社

庄野さんの死後、2018年(平成30年)に刊行された庄野潤三ブック。

庄野潤三ファンなら絶対に持っておきたい一冊である。

随筆目録や短篇小説目録、全作品解説など、データベースとしても使える情報がいっぱい。

『山の上の家 庄野潤三の本』を今すぐ読む(単行本)

③ 誕生日のアップルパイ / 庄野千寿子

庄野潤三の妻(千寿子夫人)が長女(夏子)に宛てた書簡集。

庄野文学を陰で支えた母子の交流が浮き上がる。

挿絵デザインは、庄野さんの親友・小沼丹の死後に綴られた私家版『馬画帖』から引用されたもの。

『誕生日のアップルパイ』を今すぐ読む(単行本)

 

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ジェン
文学考察ブログ『時空標本』管理人。物語の中に流れる時間を切り取り、言葉の標本として保存する。村上春樹、近代文学、そして古物を愛す。